父と娘の秘密
娘の寝んね
最近、在宅が多いのもあり、娘を寝かすときに家族3人で布団に入る。
娘は私と2人よりも妻と2人よりも3人を好む。
私と寝ていれば、途中で起きて妻を呼びに行き、妻と寝ていれば、私を呼びに来る。
3人で寝ていると、安心して眠る。
寝つきが悪いとき
しかし、それでも寝つけないときもある。
昼寝しすぎたとか、暑いとか、単純に機嫌が悪いとか、理由はそのときどきでさまざまだろう。
そういうときは、決まって、いつも優しい妻の機嫌が悪い。
娘が寝ないから妻の機嫌が悪いのか、妻の機嫌が悪いから娘が寝ないのか、それはわからない。
し、あまり私が触れるべきことでもないように思う。
そんなとき、娘は、私に「抱っこ」と甘えてくる。
甘やかしているとは分かっているが、私は娘を抱っこする。
でも、実は、ただ甘やかしているだけではない。
娘との秘密
眠れないときに、娘が私に抱っこをせがむのには理由がある。
妻はこのことを知らない。
うちは、リビングの窓が一番大きく、そこからは街の景色が一望できる。
街と言っても、小さな住宅街なので、見えるのは、ほとんど暗い夜の景色でしかない。
ただ、暗いからこそ見える、街灯や何軒かついている部屋の明かりがある。
それが妙に際立って光って見える。
娘はそれをきらきらと呼ぶ。
寝つけないときには、私に抱っこされて、うちの真っ暗なリビングから、きらきらを見るのが娘は好きなようだ。
ふたりできらきらを見ながら、ひそひそ話をする。
「きらきらきれい」
「こっちも」
「でもこっちは真っ暗」
「お友だちも歩いてないね」
「お友だちはみんな寝んねしてるんだね」
「みんな寝んね」
「じゃあきらきらにバイバイして寝んねしよっか」
「寝んねしよっか」
そんな感じの会話をふたりですると、だんだん落ち着いてきて、自分から布団に入る。
今日も幸せな1日が終わる。
これは、いつも優しい妻の機嫌が珍しく悪いときだけの出来事で、妻はこのことを知らない。
でも、不思議なことに最終的にはみんな穏やかになっている。
これはきらきらの力かもしれないけど、このことは娘とのふたりだけの秘密。