どんな選手が試合に出るべきか?
指導者なら、
「あんまり力の差がないし、どうやってメンバーを決めたらいいのかな」
「どうしてもメンバーが固定されてしまってサブの子のやる気がなくなってしまう」
といろいろと悩むところでしょうし、
保護者なら、
「なぜうちの子は試合に出られないの?」
「あの子が出ててこの子が出ていないのはおかしいよね」
など、いろいろと感じることがあるでしょう。
ではどうするべきなのでしょうか?
育成年代の指導者なら
小学生から高校生の指導者であれば、最も大切になるのは
基準を持つこと
これに尽きると思います。
- 上手い順に試合に出る
それならそうとはっきりと伝えてあげればいいと思います。
そうすれば、上手くない子は、「上手くなろう」と思うか「試合に出られるチームに行こう」と思うかどちらかです。
基準をはっきり持っていないと、調子が良くても出してもらえなくて腑に落ちなかったり、「どうせ相手が弱いときにしか出られないだろうな」と感じてしまったりします。
逆に、「おれは絶対試合に出られるからちょっと手を抜いても大丈夫」と思う子が出てきてしまう可能性もあります。
しかも、指導者はそのことに気づいていても、勝つためにその子を使ったりします。
それでは、チーム作りは上手くいかないでしょう。
私個人的には、この上手い順に出るという基準はあまり良いとは思えません。
保護者の方は上手い子から順に出ると思っているでしょうし、ウイイレならそれで勝てるかもしれませんが、
子どもがどのように感じているか
はチームの強化にも、子どもたちの成長にもとても重要です。
どんな基準が望ましいか
子どもであれば、
- 「ちょっと今日は行きたくないな」
- 「熱が出てしまったから休もう」
- 「親が送迎できないって言うししょうがないな」
- 「足が痛いのでちょっと練習抜けます」
など、さまざまな理由で練習を休んだり、途中で抜けたりしてしまうと思います。
では、コーチがこんな基準を示したらどうでしょう?
「みんな、聞いてくれ。
うちのチームではな、練習の日にちゃんと来てサッカーをすること、まずこれができている選手が試合にたくさん出られるよ。
毎回練習に参加していればだれでも出られるチャンスはあるし、きっとそんな選手は上手になるよ。
逆に、今ちょっとボール扱いが上手でも練習に来なければ試合には出られないし、せっかく持っている技術も衰えてしまうかもしれないね。」
すると、先ほどの練習を休んだり抜けたりする理由はこんな風に変わりませんか?
- 「あまり行きたくないけど、試合に出たい! やっぱり行こう!」
- 「体調管理は大事。風邪ひかないようにお風呂で温まって早く寝よう!」
- 「親に頼ってばかりじゃだめだ。自転車で通うことにしよう!」
- 「これぐらいの痛みならできる。終わったらすぐアイシングしよう。」
やったことは基準を設けただけです。
ここまで上手くいくとは限りませんが、子どもの自立はかなり促されます。
私のチームでは、学校の定期テスト期間が学校によりバラバラなため、全体練習は休みにできません。
テスト休みは取ってもいいと言ってありますが、みんな試合に出たいので、テスト休みを取らずにオフの日やバスの移動時間を使って勉強しています。
テスト期間の学校が多い時期は、こちら側も練習を早めに終わるなどの工夫をしています。
また、自主練のし過ぎが問題になることがよくありますが、このような基準があれば、まずはチームの練習で100%プレーする、それで余裕があれば自主練するし、疲れた日はしっかり身体を休める、休みの日はリフレッシュして、また練習で100%プレーするといったサイクルも自分で作ることができます。
しかし、このような基準が浸透してくると、プレーできないぐらいの怪我をしているのに無理をしてやってしまったり、本当に体調が悪いのに練習に来てしまったりすることも起こります。
そんなときはコーチの出番です。
「無理してやっているね。今日はもうやめなさい。すぐアイシングして、痛みがなくなった日からまたやろう。」
「37.0℃以上ある場合には練習を休むこと。自分は良くても他の人に風邪をうつしてしまうのは良くないよね。」
といった働きかけが必要です。
この練習の日にちゃんと来てサッカーをすることという基準は『いろはのい』です。
年代や時期、チームのレベルなどに合わせて適切な基準を設定し、子どもたちに伝え、実践することが大切だと思います。
最終的に実力のある選手が試合に出ることは間違いではないと思いますが、そこに至るまでにそれぞれが競争しながら成長できる環境を作りましょう。
その結果、スタメンを勝ち取った選手であれば、「試合に出られない選手の分も」という気持ちに自然となるでしょうし、出られない選手も「自分にできることをやろう」と思えるのではないでしょうか。
保護者の方なら
最後に、保護者の方に向けてです。
これまで述べてきたように、指導者はさまざまなこと考えてメンバーを選びます。
親として、子どもが試合に出られないことに納得していないとしても、同調したり親がなんとかしようと思わないでほしいです。
子どもに関わるのであでば、
「どんな選手が試合に出ているの?」
「コーチはなんて言ってる?」
など、丁寧に解きほぐしてあげましょう。
それでも、本人なりの答えに行きつかない場合には、本人から指導者に話しにいくように促すことも良いと思います。
ただ、です。
私もチームの子たちにたまに聞かれます。
「どうしたら自分は試合に出られますか?」
この質問は個人的にはどうかなと思います。
答えを一方的に相手に求めているような印象を受けるからです。
親も
「なんで出られないか聞いてこい」
としか言ってないんだろうなと感じます。
こんなときには、
「ぼくの武器はドリブルです。チームの中でも一番だと思っているし、得点にもつながっていると思います。
守備は苦手ですが、必要なことはやれていると思っています。
アカッターとして試合に出るには、もっとドリブルを磨くか、守備でもっと頭を使えるようになるかだと思っています。
コーチの意見を聞かせてもらえませんか?」
思っていることを言語化させるように親が関わってあげれば、小学校高学年から高校生ならこのくらいのことは言えるようになるはずです。
それで取り合ってもらえないようならチームを替えた方がいいかもしれません。
大抵の指導者は丁寧に答えてくれるはずです。
もしかしたら、
「ドリブルはすばらしいよ。
ただね、せっかくの武器も使い方が大事なんだ。
ゴール前ではパスもあるしシュートもある、ドリブルしか選択肢がないと相手は守りやすいよね。キミの武器を生かすためにも、もっといろんなアイデアを考えてごらん。」
こんな答えをもらえるかもしれません。
指導者も親も子どもの成長を思う気持ちは同じです。
協力して子どもを導いてあげたいですね。