不妊治療を始めた理由(前編)
開始が遅れる不妊治療
不妊、特に男性不妊の夫婦の問題のひとつとして挙げられることは、
発見の遅さ
です。
男性不妊の場合、無精子症でない限り、本人の自覚が基本的にありません。
痛みや身体の異常もなければ、射精も普通にできるし精液自体も肉眼で分かるような異常は見られるものではないです。
そしてなんといっても、まさか自分が不妊症などとは思いもしないからです。
こんなパターンが多いのではないでしょうか。
20代後半で結婚。
愛し合うふたりは、
「2、3年はふたりで楽しく過ごしたいね。」
と話し、避妊を続ける。
3年後、
「そろそろ子どもがほしいね」
ということになり避妊をやめる。
しかし、なかなかできず生理周期などを確認して排卵日を狙う。
「そんなに簡単にはいかないもんだね」
と言いながらしばらく続けるが成果が出ない。
気づけば結婚して5年経ち、夫婦間にも新婚当初のような熱い気持ちが薄れていく。
そこに子どもができないことが重なり、夫婦生活でも燃え上がることもなくなり、うまくいかないこともあり、回数も減っていく。
「まさかわたしの身体が悪いのかな?」
女性はそう思う。
そして男性は、
「おまえ、どっか悪いんじゃないの?」
と言う。
しばらく病院などを調べて、意を決して女性がひとりで検査へ向かうも異常なし。
微妙な雰囲気のまま、義務的な子作りにしばらく励むも成果なし。
夫婦の間では会話が減っていく。
実は女性は、少し前から
(あなたの方に問題があるんじゃないの?)
と思っていたがなかなか言えない。
勇気を持って、
「あなた、男性不妊っていうのがあってね…
一度検査だけしてみない?
わたしも一緒に病院行くから。」
しかし、
「おれのせいで子どもができないって言いたいの?
仕事で忙しいしそんな時間ないよ。」
女性は何度もお願いし、やっとの思いでしぶしぶ了解する男性。
行った先のクリニックでの検査の結果、男性不妊が発覚。
ショックで言葉を失い、医師の話も入ってこない男性。
その横で必死で話の内容を理解しようとする女性。
このとき、結婚して10年が経とうとしており、ふたりともすでに30代半ば。
これから、先の見えない苦しい不妊治療が始まる…
早期発見のために
不妊症の知名度が少しずつ高まってきた今、妊娠・出産を目指す結婚を控えたカップルのために「ブライダルチェック」というものがあります。
これは、ゼクシィなどでも取り上げられていますが、結婚前に妊娠や出産に影響を与える可能性のある疾患の有無をチェックすることです。
主に女性を対象に認知・実施されつつありますが、女性でも知っている人は結婚を控えている人の中でも半数、実際に受けたことがある人は1割未満です。
このような制度を知り、利用することも不妊症を早期に発見し、不妊治療の開始を早める方法のひとつです。
明日は、このような制度があるにもかかわらず、あまり普及していない背景に迫り、私たちが不妊治療を始めたときのことも綴りたいと思います。