母の記憶~その後⑥
私の少年時代の母の記憶と、母が亡くなってからの印象的な出来事を綴っています。
辛い回もありますが、ぜひ最初から全部読んでいただけると嬉しいです。
6人家族から3人家族になった私たちは私の大学進学により父と弟の2人になりました。 しかし翌年、父が私の大学と同じ地域に転勤になり、再び3人での生活が始まりました。 新しい家では10年、3人での生活が続きました。 その間に、私は大学から大学院へ、弟は定時制高校から専門学校に行きましたが続かずにアルバイトをしながら病気と闘っていました。 そして、15年間独り身だった父は再婚しました。 父の結婚は本来喜ばしいことです。 母方の祖母からも 「そろそろ結婚したら?」 そう言われていました。 私も、50歳過ぎて大人の子供も2人いる人と一緒になってくれる人がいるならそれだけでいいかなと思っていました。 弟も、少し父をとられたような気持ちもあったけれど、父が幸せになるならいいことだし、もしかしたら新しいお母さんと思えるかもしれない… そんな期待を抱いていました。 そして、初めてその人がうちに遊びに来た日のことです。 私は都合が合わなかったので、父がその人を連れてきて、弟が迎え入れました。 うちでは、1階のリビングに母の仏壇を置いていました。 それを見るなりその人は、 「これは見えないところに移動して。」 そう言ったそうです。 弟は、激怒しましたが、もう昔とは違って大人です。 その場ではグッと堪えたそうです。 そして、その人が帰った夜、泣き崩れて、 「なんでパパはあんなやつに…」 そう繰り返していました。 その人は、以前結婚していましたが、子供はおらず、母親になったことはありませんでした。 父との結婚も、単純に好きな人と結婚するという意識だったのでしょう。 結婚相手には、母親を亡くした子供がいることや、その子供たちにとって母親がどういう存在かなど、考えたこともなかったのでしょう。 自分が好きな男の昔の女に嫉妬しているようにしか感じられませんでした。 それからさらに10年ほど経ちましたが、弟とその人の距離は縮まることはありませんでした。 私も、その人をお母さんと思ったことはないです。 ただ、父の人生に新たな幸せをくれたことにはとても感謝しています。 38歳で最愛の妻を亡くし、そのまま独り身で生涯を終えるのは悲しすぎます。 50歳を越えた父に老後の楽しみを与えてくれたのはその人です。 私たちの母ではありませんが、父親の奥さんです。 幸せに過ごしてほしいと思います。 父の再婚の少しあと、私も結婚し仕事の都合もあり、引っ越しました。 弟は、広い家にひとりで暮らすことになり、家族は1年に1回しか集まることができなくなりました。
それぞれの生活
家族の形の変化
父の再婚相手